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* CST MWS and CST MISROSTRIPES are trademarks of CST AG. XFdtd is a trademark of Remcom Inc.

MicroStripes はTLM法による3次元任意形状の電磁界解析ソフトです.

TLM法:空間の離散点間を1次元線路と仮定し,各格子点で散乱行列を定義して波動伝搬を逐次的に計算する手法.


1. TLM法の文献

TLM法の文献は?

"The Transmission-Line Modeling Method TLM", Christos Christpoulos, IEEE PRESS IEEE Order No. PC3665 が一冊にまとまっている書籍です.

TLM伝達線路行列法入門=非定常電磁界解析のためのもうひとつのモデル=
C.クリストポロス著/加川幸雄訳 A5.211頁 本体4300円+税
発行元:培風館(TEL:3262-5256)


解析の基礎と多くの事例は,つぎの文献をご参照ください.

『小型アンテナの設計と運用』,小暮裕明・小暮芳江 共著,誠文堂新光社
『すぐに役立つ電磁気学の基本』,小暮裕明・小暮芳江 共著,誠文堂新光社
『電気が面白いほどわかる本』,小暮裕明著,新星出版社
『電磁界シミュレータで学ぶ 高周波の世界』,小暮裕明著,CQ出版社
『電磁界シミュレータで学ぶ ワイヤレスの世界』,小暮裕明著,CQ出版社

2. TLM法とFD-TD法の違い

TLM法とFD-TD法の違いは何ですか?

TLM法とFD-TD法は異なった手法です.しかしいくつかの共通点があり,片方からもう片方の手法が導出できます.

有限差分時間領域法(FD-TD法)は,Maxwellの方程式の時間軸における直接的な解法です.これは空間および時間に関する導関数を求めるのに,シンプルな差分的近似を使っています.モデル化した領域を分離した場所を電界と磁界の2つの別々のグリッドで表現します.

TLM法は能力的にほとんどFD-TD法と変わりませんが,そのアプローチは異なります.解析は同じくタイムドメインで行われ,解析空間をグリッドに分割します.電界と磁界のグリッドがFD-TD法のように交互配置されているのにもかかわらず,1つのグリッドが定まります.そしてこのグリッドは仮想的な伝送線路で相互接続されます.

TLM法は,複合的な境界条件をモデリングする上ではFD-TD法よりもすぐれているといえます.これは電界と磁界両方がすべての境界ノードで計算されるからです.TLM法もFD-TD法も,メッシュが粗い場合は分散誤差を受けやすくなります.しかしTLM法はFD-TD法よりは受けにくく,より精度を保てます.

3. 全体のセル数を減らす方法

全体のセル数を減らすよい方法は?

金属部分の領域はDead Cellsと呼んでいるように,内部はセルが取られません.表面インピーダンスを377オームに設定することで解析上は空間と同様に扱われますので,メモリーや解析時間の節約になります.ただし解析上影響のない領域,例えば同軸ケーブルの周囲等に限られます.

4. Sパラメータを求める

Sパラメータを求める場合のポート位置は?

Version 5.5からは,伝送線路のポートの設定がより簡単になりました.Version 4.0以前をお使いのユーザは,以下を参照してください.
また空間を伝送線路と仮定し,例えばEy,Hxという出力点を用意することでSパラメータを求める場合も,ポートを定義するには,同様に2点の出力点を設定します.

手順は

(1) Sパラメータを求めるときに,1ポートにつきoutput pointsが2点必要になります.
(2) この2点はある程度離す必要があります.
(3) ガイドラインとして,求めたい周波数範囲で,
  ・低い方の周波数の波長の約1/10以上離し,
  ・高い方の周波数の波長の約1/2以下の範囲,が目安です.
 *どうしても寸法上無理なときは,波長の2%程度でも比較的よい結果が得られます.
(4) さらにメッシュを切ったとき,この2点間は,.tlmファイルでは
  3〜4ブロック以上離れている必要があります.
2点間の距離が波長の整数倍/2のときには不定になります.また波長の整数倍/2を超えると差分を求める上での単調増加の領域を超えてしまいますので,正確な電位差が求められません.
さらに,近すぎると差分が出ないことと,ノイズ分も含まれるため,やはり正確な電位差が求められません.ノイズ分は,他のモード(evanescent modes),タイムドメインの打ち切り,不完全な励振(initial conditions)などが原因で発生しますが,これらをシミュレーション前に予測するのは困難です.
以上の点を考慮して,output pointsの距離を決定してください.

Sパラメータの結果がおかしい場合の原因は?

上記のガイドラインにそっていてもSパラメータの結果が1を超えたり,大きな値になった場合,原因としては,ポートを示すoutput point2点の記述順が間違っていることが考えられます.
励振に近い方のポートが自動的にポート1となりますが,このときoutput point2点の座標の記述順は,励振に近い方の点を先に書きます.
一方,反対側のポートがポート2の場合,ポート1の方に向かって手前側の点を先に書かなければなりません.つまり,常にデバイスに向かって手前から先に記述しないと,Sパラメータの結果がおかしくなります.

5. 線路の導電率

線路の導電率は設定できますか?

Version 5.5からは,直接設定できるようになりました.Version 4.0以前をお使いのユーザは,以下を参照してください.

.geomファイルでは表面インピーダンスを設定しますので,直接ではありませんが,表皮の厚さと導電率から,Z=1/(表皮の厚さ*導電率)で設定できます.

6. TLM Cutoff

TLM Cutoff以上の結果の誤差は?

TLM Cutoff(上限)周波数はマニュアルにあるような式で,自動的に決まります.この値はモデリングしたセルの寸法から割り出した値です.1波長当たり20セルで十分精度がとれます. (なお1波長当たり10セルにとったとき,分散誤差は2%以下です. 文献:"The Transmission-Line Modeling Method TLM", Christos Christpoulos, IEEE PRESS IEEE Order No. PC3665 )
タイムドメイン(過渡応答)の計算そのものは上記以外の誤差を生じませんが,フーリエ変換で周波数のわずかなずれを生じます. TLM Cutoffまでは,以上の範囲での確からしさ,ということになります.

7. 誘電率(Permittivity)

媒質のパラメータは?

媒質の特性値として,現在導電率,比誘電率,比透磁率が設定できますが,誘電体損失の効果を与えるために等価的な導電率を設定します.

Version 5.5以からは,媒質の磁気的な損失を定義でき,x,y,z方向にそれぞれ導電率,比誘電率,比透磁率を定義できるようになっています.

Version 7からは,周波数依存性を定義するDebyeパラメータを算出するDebye Calculatorが用意されました.

8. フェライト

フェライトはモデリングできるか?

フェライトを正確にモデリングするには,周波数依存とテンソル透磁率を表現しなければなりません.今後のリリースで定義できるように計画しています.フェライトが等方性媒質あるいは軸方向に異方性があると仮定できる場合はモデリングできます.

9. 解析モデルの大きさの制限

解析モデルの大きさに制限があるのでしょうか?

解析モデルの大きさ自体に制限はありません.使用できる実装メモリ容量によります.

10. 解析可能周波数

解析周波数の上限に制限はあるでしょうか?

TLM Cutoff(上限)周波数はマニュアルにあるような式で決まります.この値はモデリングしたセルの寸法から割り出した値ですが,フーリエ変換を行う前処理のフィルターで,この値以上に設定できます.但しあまりかけ離れた値では誤差が大きくなります.

11. returnとloss

1ポートのモデルでSパラメータを求めたときのreturnとlossとは何か?

"return" はいわゆるリターンロスで,20log10|S11| で求められます. 2ポートの場合,トランスミッションロスは20log10|S21|ですが,1ポートモデルのlossは,デバイスの(熱)エネルギーロスと考えられます.

12. 集中定数素子

解析に集中定数素子を含むことはできますか?

Version 4.0以降,集中定数素子の抵抗,キャパシタ,インダクタは,定義できるようになりました.

13. アクティブ素子

解析にアクティブ素子を含むことはできますか?

現在は含むことはできません.Sパラメータ出力結果をTouchstoneフォーマットに変換し,SPICEなどの回路シミュレータに渡して解析できます.

14. 任意の入力波形

任意の入力波形は設定できますか?

現在はDouble-Exponential,Gaussian,Sine,Puls train については可能です.Convolveモジュールでインパルスと畳み込むことができます.

15. BALUN

アンテナのBALUNも一緒に解析できますか?

BALUNをモデリングすることは可能です.現実のものとまったく同じにモデリングしますから,例えば同軸の周囲に1/4波長のスカート部をつけたシュペルトップ(阻止管)またはスリーブ・バランといったモデルになります.

16. アンテナの入力インピーダンス

アンテナの入力インピーダンスは求められますか?

Version 5.5からは1ポートデバイスの正規化Zを出力できるようになりました.またVersion 6.0からはZ-inputのグラフを表示できます.Version 4.0以前をお使いのユーザは,以下を参照してください.

Version 4.0以前では,直接この値は出力しませんが,給電線の特性インピーダンスを正確にモデリングしたものは,たとえばZo=50 OhmsにしてS11 を求め,
Zin=Zo (1+S11)/(1-S11)の式で求められます. (Zin, S11 複素数)
*この値は参照面が2出力点の中央における入力インピーダンスということなりますが,参照面の位置は変えられます.

17. Graph PlotのMod

Graph PlotのModとは何ですか?

ModはModulusの略ですから絶対値のことです.

18. 放射電力(Total Power)

Far Field表示のときのTotal Power値は非常に小さいが?

ワイヤー系のアンテナでは入力の1Vがワイヤー上で共振しますので,リーズナブルな値です. ホーンアンテナの例題では,導波管内の伝送モードとして電界をかけてTEモードを設定していることになります.Cavity等で励振したものではなく,伝送してホーンの外に出た電磁界から遠方界パターンを求めていますので,値は小さいですがGainの値は正確です.

19. アンテナの放射パターン

アンテナの放射パターンを求めるときの equivalent surface(等価面)の大きさは?

まずアンテナの放射パターンを求めるときには,work_spaceをアンテナの寸法の約3割程度離した位置に設定します.例えばホーンアンテナの開口部の最大寸法をLとすると,開口部付近は,開口部の端からx,y,z各方向へ0.3L程度離した位置にwork_spaceを設定します.
Equivalent surfaceは,アンテナを囲み,よりアンテナに近い位置でかまいませんが,アンテナ自体を貫通してはいけません.またlumped cellsを使っている場合は,集合した1セルを貫通してはいけません.

以上は最小限の寸法ですから,メモリーに余裕があれば,アンテナからx,y,z各方向へ1波長程度以上離した位置に設定してください.

20. 終端(Termination)

終端(Termination)の仕方がよくわからないのですが?

終端(Termination)されていないと,Sパラメータの結果に大きなリップルが現れたりします.終端の仕方は,同軸線路やマイクロストリップ線路ではAbsorbing Boundaryにすることで実現できます.(サンプルSec_5_data/microstrip_filter)
また同軸線路の例題Sec_5_data/Coax_microstrip_transitionでは,メタルで終端し,377オームを設定しています.(Absorbing Boundaryと同等)
ホーンアンテナの例題では,導波管の特性インピーダンスで終端しています. この値はUtilityの Waveguide Parameters...を使って求められます.
いずれにしても,Micro-Stripesでは現実に忠実にモデリングしますので,端部をマッチングする必要があります.

なお,Version 5.5からは,ポートの設定がより簡単になりました.

21. S-MatrixのSettings

S-Matrix(2 Port)のSettingsのDevice指定がよくわからないのですが?

1. 解析するデバイスがポートに対して幾何学的対称で無損失ならば
  is Symmetric with Respect to Portsを指定します.
  可逆性があり,相反定理が成り立つデバイスはS11=S22,S12=S21です.
  例:直線のマイクロストリップ線路.

2. 同様に無損失デバイスの両ポートが同じタイプの導波管や伝送線路
 (しかしデバイスが非対称)ならば has Identical Portsを指定します.

3. 片側のポートの寸法が異なる場合などは,幾何学的対称ではなくなるので,
  Losslessを指定します.

22. モード励振

モード励振(initial_mode)の仕方がよくわからないのですが?

Version 5.5からは,モード励振を含むポートの設定がより簡単になりました.
これにより,方形導波管内のTE11モード励振などを直接設定できるようになりました.

方形導波管TE11モード励振サンプルファイルのダウンロード(23.2KB)

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